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『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』佐藤雄佑

読んだ。 転職先が人材業界で、面接の時に「企業と求職者のマッチングは妥協の産物であり、そこがシステム的に面白い」と面接官さんが表現しており、そういえば業界に対して興味もてた試しないなと思い、とりあえずざっくり掴んどくか、と購入。同時に『人材ビジネス しくみと仕事がしっかりわかる教科書』というやつも買ってる。

んでこの本についてなんだけど、人材業界の歴史を江戸時代から語りつつ、現代の業界の俯瞰図、そして今後の展望について書かれている。業界素人のおれみたいな人間にとっては業界の扱う採用支援の手法(リクルーティングチャネルというらしい)が網羅的に説明されていて、それぞれの強みとか歴史(関連法規がいつ成立してどういう影響で広がったとか)がまとめられているのはほんとうに助かった。 また、めちゃくちゃかっこよかったのが、人材業界に長くいる人間でありながら、まえがきで、

『非合法な手段も含めて商売をしてきた経緯から「困窮者の雇用での救済」と「搾取、人身売買」といった二面性を持ちながら発展してきた歴史を持っています。』

と言い切っていることで、おれはこの一文を読んだ瞬間にこの筆者の客観性というか、歴史に対する感度の高さというか、現代のイデオロギーだけでモノを見ない、業界の自己弁護にまかれない視点にかなり痺れた。このあとも新卒採用の歴史が学制と関連するということを指摘したり、(じゃあそれ以前はどうだったのか? とおれが疑問に思った段階で)さらに遡って江戸時代の人材業界についてまとめたりと、痒いところに手が届くというか、知的好奇心をもてあそんでくるような面白さに満ちていた。

それと、あとがきに経緯がまとめてあって、どうもMBA修士論文として書かれた内容をもとに書籍化されたっぽい(よくあるやつ)。人材業界全体の俯瞰図について先行研究が全然ないところからはじまり、とりあえず網羅的に業界地図を書いた上で一社一社地道に訪問して一次情報を集めたらしい。正直もうそれだけで頭が下がる。Amazonレビューだとこんなの誰でも知ってるとか書かれてんだけど、そんな素人が居酒屋で喋ってる内容と比較するのは本当に筋違いで、たとえ内容がそう変わらないとしても、こうして学術的に資料として残してくれたことにものすごく価値があると思う。この資料があるからこそ次に書ける論文が生まれると思うし、いやほんと、こういうの馬鹿にしちゃダメだと思いますね。。

最後に気になった点だけあげると、ま〜〜とにかく誤字が多い。良い本なので出版社はちゃんと直してあげてほしい。またあまりにリクルート中心的すぎる(これは実際日本の人材業界がリクルート中心ということなのかもしれないが)。それとタイトルの付け方が、ま〜マーケティング的にはそうなんだろうけど、このタイトルで惹かれるひとはちょっと違うだろうなと思ってしまった。この本はビジネス書というよりはもうちょい教養を補強する面が強いので、歴史の読み方が分からないひととかが読むと楽しめないのではないかなと思う。